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AV女優にHIV感染が発覚、「遅すぎる」発表に現場から不安の声
2018年10月30日 15:53日刊SPA!
 今、AV業界が揺れている。事の発端は10月22日夜、「AV人権倫理機構」から出されたリポートにおいて、“今年9月にAV女優1名がHIVに感染していることが性感染症検査において判明した”と書かれていたのだ。

10月22日に発表された文書(「AV人権倫理機構」のサイトより)
今年9月にAV女優のHIV感染が発覚、噂や憶測が飛び交う事態に…

『専門機関の診断のもと、AV撮影に関する感染ではなかったこと、当該女優と接した関係者に罹患していないこと等を確認し、各団体に事例報告を行いました』

(「AV人権倫理機構」10月22日のリポートより抜粋。以下、『』部分は引用)

 文書では、HIVが蔓延することを未然に防ぐことができたとされているが、長く業界に身を置き出演もこなすAV監督のA氏がこう話す。

「正直、不安でしかないです。感染者がAV女優ということは発表されていますが、どうやって確かめたのか、いつ感染が発覚したのか、いつから感染していたのか、感染した可能性があるまま出演した本数などの時系列や事実関係が一切明かされていません。『AV撮影に関する感染ではなかった』と明記してありますが、本当に共演した男優や女優に感染していないと断言できるのか、専門機関とはどういった機関で、どのような検査をしたのでしょうか。明記されていないことが多過ぎます」

AV業界内では不安の声が多数

 現在、AV業界で働く関係者の間で大きく波紋が広がっており、「こんな紙切れ1枚で、しかも抽象的な内容しか書かれておらず、私たちが納得できるわけがありません」と感情を吐露する企画AV女優のBさん。HIVに感染してしまった女優の噂でAV業界はもちきりだという。

「行く先々の現場でだれなのか特定するような話まで出ていますが、問題はそこじゃないんです。彼女のプライバシーを守る必要はありますが、噂では検査を受けずに現場に出ていたらしく、それを認めているとしたらメーカーや事務所の責任もあると思います。私は、仕事をする時は必ず検査を受けさせられますし、撮影当日に写真付き身分証と検査結果がわかる物がなければ撮影してもらえません。それがないとメイクも始まらない。それぐらい厳密にやってます。彼女の感染が発覚した後、絡んだ男優と女優には内密に連絡がいき、検査を受けさせられたらしいのですが、検査結果が出るまでにも仕事をしているらしく、相手に黙って性行為をしたら傷害罪にあたるのではないでしょうか。その間にその男優と絡んでいたら……そう考えるとゾッとします」

 Bさんが声を震わせながら続ける。

「それから、AV人権倫理機構の文章では、彼女が引退しているとは書かれていません。まだ現役で続けさせているのならば、なぜ事務所は彼女を休業させないのか。彼女に経済的余裕がないなどの理由で辞められない、あるいは辞めさせられないのか。AV現場で感染したわけではないなら、プライベートの恋人なのか、風俗で働いたからなのか。HIVは死ぬ病気ではないにせよ、伝染ってしまったらどう対応してくれるのだろう。まず、現在の医学において“エイズは死に至る病気ではないし、薬を飲み続ければ非感染者と平均寿命は変わらない”のは認識しています。それを理解したうえで、HIVに感染した状態でAV女優や風俗嬢として生きるのはアリなのでしょうか。業界のルールとして決めといて欲しいです」

HIVや性感染症への対策、その実情は…

 彼女のHIV感染が判明したのが9月だとすれば、報告まで約1か月のタイムラグがある。前出のA氏は、女優と接した関係者だけではなく、AV業界全体にも知らせるべきだったのではないかと憤る。

「発表しただけマシでしょうが、だとしても日本は遅すぎますね。アメリカでは、本当に徹底しています。撮影前に必ず検査をしますが、HIVを含めて感染症が見つかった場合は一切の撮影をストップさせます。その撮影のみならず、AV業界全体ですべての撮影を止めるんです」

 文書の中では『プロダクション団体はこれまでも性感染症予防のセミナーを定期的に開催し、健康・安全面に特段の配慮をしてまいりました』と記されている。日本でもAVに出演する際には、事前に感染症の検査は必須のはず。しかし、内情はそうでもないらしい。女優同士のつながりから、Bさんはさまざまな話を耳にするという。

「単体の女優さんは必ず検査を受けていますが、企画単体や企画の場合は、検査を受けさせないで出演させてしまうメーカーがあるって。都内じゃないメーカーは結構ゆるいらしいです」

 AV女優の世界には、単体女優、企画単体(キカタン)女優、企画女優の順番で階級のようなものが存在している。

「検査代は約13000円かかるのですが、今日明日のお金に困ってAV出演を決める子の中には、その13000円を捻出できない子もいるんです。でもメーカーや事務所はうるさいことを言って、その子の気が変わって出演をやめてしまうのが怖いから『とりあえず撮っちゃおう』って考える。だから今回みたいなことになってしまう。それで巡り巡って、まともにやってる私たちがヒヤヒヤすることになるんです」

 一方で、男優の場合はどうか。検査が義務付けられて引退せざるを得なかった男優もいるとA氏は話す。

「男優の場合は検査が徹底していて、汁男優でも必ず検査を受けなければならず、細々とやっていたベテランの汁男優の中には検査代が払えず引退しちゃったって話もよく聞きますね」

AV業界の未来を危惧「安心して働けるために…」

「当たり前のことですが、今後は全メーカーで検査を徹底するべき。HIVだけではなく、クラミジアや淋病も徹底して調べなければなりません。そして、HIVだけでなく何らかの感染が発覚した場合の対処法のマニュアルを考えるべきだと思います。感染が確認された時点で休業するのは当然で、潜伏期間に接触した相手への報告を義務付けるとか。このままでは、出演者たちは安心して仕事ができず、業界を去る人も増えるだろうし、今後は新人が入ってこなくなってしまうでしょう」

 そう言って、AV業界の未来を危惧するA氏。そもそも「AV人権倫理機構」とは、“AV出演強要問題”をきっかけに、弁護士や大学教授などが集まり発足したAV業界の第三者機関。2017年10月よりAV業界の改善に向けて活動を開始しているが、一般的にはあまり知られていないのが現実だろう。HIV感染の事実があったことを、AV業界にも周知が徹底されていなかったことにも疑問を呈す。

「サイト内で発表されたのみで、Twitterの公式アカウントがあるにも関わらず、ツイートもしていない(記事執筆10月25日時点)。一般層まで拡散させる必要はないと思いますが、せめてAV業界の人たちには周知させなければ意味がない」

AV人権倫理機構の回答

 今回の件を受け、10月24日夜に日刊SPA!は「AV人権倫理機構」に以下の質問状を送付した。

——「専門機関の診断のもと」について、具体的な説明がありませんが、なぜ「AV撮影に関する感染ではなかった」と言い切れるのか。また、それ以外の感染だったとすれば、なにが原因だったのか(たとえば、風俗でも働いているなどが挙げられると思います)。

——どのように確かめたのか、いつ感染が発覚したのか、いつから感染していたのか、などの時系列が記載されておりませんが、本当に「早期発見と迅速な対応につながり、不慮の蔓延を防ぐことができた」のでしょうか?

——共演した男優や女優に感染してしまった可能性

——感染していた女優は、現在もAVに出演し続けているのか

——出演している場合、共演者には伝えているのか

——サイト内での発表だけではなく、AV業界で働いている人たちに、周知を徹底させる必要があるのではないか。現在、Twitterにアカウントがあるにも関わらず、情報が出されていないことについて。

——今後、AV業界で再び感染者がでた場合の対処・対応は考えているのか。

 以上の内容だが、AV人権倫理機構からはこのように返ってきた。

「本件、25日の当機構理事会でも議題として確認させていただきました。既に本件につきましては週刊SPA!様よりご質問が届いており、いただきました件につきましてはご報告させていただいております。そちらを当機構の意見として、一本化したいと考えます」

 ということで、詳細は11月13日発売の『週刊SPA!』(11月20日号)にてお伝えする予定だ。さまざまな噂や憶測が飛び交い、議論がなされている状況だが、そこで働く人たちが、安心して働けるようになることが最優先だろう。AV業界の未来が、より良い方向にいくことを願ってやまない。<取材・文/日刊SPA!取材班>